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7/20 

バスが来るのを待っていると、前に並んでいた男女2人が、近くにあるラブホテルのものと思しきマッチを手に話していた。
そ知らぬ顔をして聞き耳を立てていると、煙草に火を点けるときにマッチを使うとカッコいい、といった話をしていた。
僕もなかなかそうだと思った。ただ、その仕草はアラン・ドロンとかがするからカッコいいのかもしれないけど。織田祐二のそれはあんまりカッコよくなかったし。
ニイチャンはそんな話をしながらマッチを擦ろうとしていたが、湿気のせいか、2、3本立て続けにぼきりと折ってしまった。
それを見ていたネエチャンは「アンタ本当にぶきっちょねー」と言いながらニイチャンの手からマッチをひったくった。
煙草を口にくわえて、ぼきり。ネエチャンもマッチをするのを失敗した。
はっきりとマッチの意志を感じた。
恋人たちに反逆をこころみる、そのマッチの勇姿に僕は胸を打たれた。そうだ。絶対に火なんてともしてやるなよ。
道具の反乱にむっとしたのであろう、ネエチャンは眉間に皺を寄せて、再びマッチを擦ろうとした。
ちょうどそのとき、僕とネイチャンの目が合ってしまった。一瞬の間の後に「ちょっと、アンタこのマッチ擦れる?」とマッチ箱を差し出す。
これはどういうことだ。何でこのネエチャンは見ず知らずの僕にマッチを擦らせようというのか。
今若者の中ではマッチの擦らせあいとかがブームなのだろうか。全く乱れてやがる。
だいいち君は恥ずかしくないのか、知らん人にラブホテルのマッチなんか差し出してよう!
そう思ったけど、勿論口に出しては言わなかった。
それはネエチャンの剣幕にビビったのではなく、ここまでマッチを擦れないこの2人は、もしかしたらラリっているのかもしれないことにビビったからだ。先ほどまで、2本の注射を打たれたのかもしれない。だからうまく指先を使えないのかもしれない。へたに逆らって、刺激させたらことだ。おずおずとマッチを受け取る。
自慢じゃないが僕は棒を擦るのには慣れている。FA権が目前にせまる8年選手だ。だけども目の前でこれほど立て続けに失敗されると、ちょっとばかり自信がない。そこではたと気付く。これは、「ここでいつもしていることをしてごらんなさい」というメタファーなのか。なんという辱めだ。僕は泣きそうになった。こんな場所じゃ無理だ。午後9時30分。僕の後ろには家路につこうとするサラリーマン、大学生、多くの人が並んでいる。みんな、おまえを、見ているぜ。頭が沸騰しそうになった。
ミスするわけにはいかない。手がぶるぶると震えた。マッチはにやにや笑いながら僕に言った。やれるもんならやってみな。僕は歯をがちがちと鳴らしながら、このマッチがしけっていないことを祈った。
親指、人差し指、そして中指でマッチを持った。そして箱の側面を撫でた。ぼっ、という音を立てて、小さな炎がともった。おめでとう。マッチは言った。暖かな光が、僕を照らした。
スゲーお兄さんマジカッコいいよーとかなんとかほざくネエチャンから、くつがえすことのできない上から目線を感じた。僕は、とびきりのアルカイックスマイルで応えようとした。ネエチャンは静かになった。できることならこの小さな炎と一緒に燃え尽きて、消えてしまいたかった。
[ 2007/07/20 23:55 ] 日記 | CM(0)
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