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5/14 

『 きっつぉうまれかっわっつぁってー おなーじばっしょっれぇぇー 』

人口密度の割には静かな店内に、ビットレート28kbpsくらいの擦れた声が響き渡った。
あぁ何という愚かなことをしてしまったのだろう。鳴ったのは僕の携帯電話だ。
生まれ変わって何になるつもりだ僕は。
自転車で坂道下ってるとTシャツにくっ付いてくる、あの小さな羽虫なんてどうだ。
新しい携帯電話になって、着うたがダウンロードできるようになったからといって嬉々として設定するんじゃなかった。
鳴動する機会なんて本当に少ないくせに、こういった場面でばかり鳴りやがって。
前の携帯電話も、電車内である晴れた日がどうとかいう曲を流したりしやがった。

身体中に視線が突き刺さる感覚をおぼえる。
先述したように店内は静かではあるが人口密度は高く、全て男性だ。この場では、なるたけ音を立てないのがマナーなのに。
目を伏せて、足早にそのエリア――ピンクやグリーンの髪をした女の子が微笑んでいるエリア――の出口へ向かいながら携帯電話を確認する。
信じられない。マナーモードに設定しておかなかったなんて。設定が外れている。くそ、誰の陰謀だ。

確認を終え携帯電話をポケットにねじ込むと同時に万引き防止機を越え、エリアの外へ。
エリアの出口は店そのものの出口に近く、そこから出てきた人間は何の意図をもってそこに居たのかは外からはっきりと分かるのであった。
外へ出た瞬間、女の人と目が合った。


ここで少し話を脱線することを許してもらいたい。

やむを得ず外出しなければならないとき(ウィークデイのほぼ毎日なのだが……)そんなときに僕がする他愛無い遊びの1つに、「視線回避ごっこ」というものがある。
ルールは簡単だ。僕は人と目を合わせたら死んでしまうのではないかと思い込んで家のドアを開ける。
小学生の頃、登下校中に道路の白線以外踏んだらアウト、あーケンちゃんアーウト、タカシ君だって踵出てるじゃんか、みたいなことをした経験はないだろうか。
だからどうって訳じゃないけど。
どうやって死ぬかは各人の好みに分かれるところだが、泡になってしまうとか人魚姫を気取ってみてもいいし、俺は追っ手から逃げている某国のエージェント、みたいな設定を作るのも良い。
こういうディティールが遊びをより面白くするのだ。
ちなみに僕は、人々の中には地球を侵略しにきた異性人が地球人そっくりの姿で潜んでいて、彼らは視線を合わせることによって地球人の脳組織を改造することができる……といった設定をよく使う。

人と目が合ったらゲームオーバーであるが、初心者はどうしても簡単に殺されてしまう。
意識してみると、意外に人と目が合う機会はあるのだ。
エレベーターがあいた時、四つ角を曲がる時……。
日常のどこにでも、死の危険性を孕む双眸は潜んでいる。
最初の頃は3秒ルールを適用してみるのも良い。
経験を積んでくると自然に目は泳ぎだし、常に伏し目がちになってくる。

おめでとう。また1人戦士が誕生したこととなる。
もう何も、恐れるものはないはずだ。

今日も僕らは敵からの攻撃を避け、戦っている。
そう、我々は戦っているのです。
だから学校で、会社で、街で、常に下を向いている人を暗いだとか、陰気だとか言って馬鹿にするのはやめてください。
デリカシーのない人間は嫌いです。怖いのです。攻撃が怖いのです。
遊びです。遊びなのです。本気出せば目を見て話せるってば。


さて話を戻そう。僕はやはり「視線回避ごっこ」をしていた。
歴戦の戦士である僕は危険度が高い日中のミッションも難なく終わらせ、適当に街を物色して、今日も本部(=家)へ帰還するはずだった。
いつも通りの簡単な任務。ミスなどするはずがない。

だが……不測の事態が戦士を惑わせる。
妙にきょろきょろしてしまったのかもしれない。それが敵の目を引いたのかもしれない。

僕と目が合った女性は……あぁ、こんな大都会で……確立なんて微々たるものだろうに……。



戦士は今、死んだのだ。
[ 2007/05/14 19:46 ] 日記 | CM(0)
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